ダニエル・クレイグのボンド最終作
2021年10月1日(金)より公開が始まった007の最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の感想を書きます。
今作は前作の『007 スペクター』からストーリーは続いており、いきなり今作を見ても背景がわからなかったりするので、ダニエル007シリーズを予習しておくのをオススメします。
時間がある方はダニエル007シリーズを全部見!
『007/カジノ・ロワイヤル』、『007/慰めの報酬』、『007 スカイフォール』、『007 スペクター』
とりあえず最新作を見たい方は 『007 スペクター』 だけでも事前に観ておくとストーリーの内容がわかります!
本作のあらすじ
前作『007 スペクター』の敵であった巨大組織「スペクター」の首領「ブロフェルド」をMに引渡、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)はMI6を引退しました。
引退後は恋人マドレーヌ(レア・セドゥ)と共にジャマイカで静かな生活を送っていたが謎の組織から襲撃にあい、組織を調べるため再びスパイの世界に戻ってくるのであった。
ここよりネタバレを含みます!
オープニングシーンはホラーテイスト
映画の冒頭はこれまでの「007」シリーズと同様に銃口を向けられた007が振り向きざまに銃を撃つ「ガンバレル・ショット」からスタートします。
これまでの作品であれば怒濤のアクションシーンやカーチェイスが繰り広げられますが、真冬の奥地にある家からスタートします。
ボンドは登場せず、マドレーヌの幼少時(過去の生い立ち)が描かれています。
幼少時のマドレーヌを追いかける謎の殺し屋は能面を付けているためホラー感満載でした。
「ボンドガール」改め、「ボンドレディー」に名称変更
世の中の情勢を考慮して名称は変わりましたが今作のボンドレディーの一人は新人のエージェントとして登場しました。
今回のミッションのために3週間訓練を受けたとのことですが、スパイの世界ではまだまだ新人のようでウォッカを一気飲みしたり、ボンドのジョークを真面目に受けたりと「こいつ大丈夫か?」と思わされましたが、敵の攻撃が始まると大活躍する姿を見せてくれました。
が、その反面で逃げようとするターゲットを捕まえるのに車で突っ込んだりと新人らしさを感じ面白かったです。
前作からの主要キャラクターも登場
ボンドを襲撃してきた謎の組織を追跡していたところ、「スペクター」の首領であるブロフェルドが関与していると疑い、刑務所に服役しているブロフェルドに会いに行く場面もありました。
マドレーヌとの幸せな時間を過ごしていたあの時間から5年後に精神科医としてマドレーヌと再開するもある陰謀に巻き込まれていたのでした。
新しい「007」は黒人女性!?
ボンドが引退したため「007」の肩書きは空席になっているかと思ったら、新たに黒人女性ノーミ(ラシャーナ・リンチ)が「007」を名乗っていました。
ダイバーシティ(年齢、性別、人種、宗教を差別しない取り組み)に配慮した形なのでしょうが、そもそもMI6はイギリスを守るための機関であり、お国を守るために死ぬエージェントとして「00(ダブルオー)」を名乗るのが黒人女性というのはありえるのだろうかという疑問が出てきました。
結果的にボンドが復帰したので「007」の肩書きをボンドに譲りましたが疑問は残ったままでした。
何を思い世界征服を企むのか
巨大組織「スペクター」を壊滅させ、DNAを使用した兵器で世界征服を企んだ「サフィン(ラミ・マレック)」ですが、小物なのか大物なのかイマイチわからない展開で、組織を率いる大ボスというよりは、中ボス程度の存在感に思えました。
組織をまとめる首領としてカリスマ性や、世界征服を企む理由がイマイチ見えてこなかったのが中ボス程度の印象になってしまったんだと思います。
指定された人、民族を殺す兵器を使って叶えたい野望とはなにか?がわからなかったです。
エンドロール後の「James Bond will return」
触れてしまえばマドレーヌを殺すことになる細菌兵器に感染したボンドは、細菌兵器を生産する工場と共にミサイル攻撃で散った演出になっていました。
本作のラストでMが故ボンドを悼んで以下の文章を読み上げていました。
「人間の本来の役割は、存在することではなく、生きることだ。日々を長引かせようとして無駄にすることはない。私は自分の時間を生きよう」
また、ボンドはQに感染した細菌兵器を体から取り除くことはできないかと聞いていましたが、Qの答えは「No」。
愛するマドレーヌを殺さないため、自ら死を選んだボンド。
本作でジェームズ・ボンドの007は終わりなのかと思いましたが、エンドロール後に「James Bond will return(ボンドはまた帰ってくる)」の文字が映し出されました。
あの最後でジェームズ・ボンドが復活することがあるとは思えませんが次回作に期待します。
感想まとめ
これまでの「007」シリーズとは一線を画したダニエル007シリーズはこれで終わりました。
これまでの様式美からボンドの成長を描いたダニエル007シリーズは新しい「007」を魅せてくれたので面白い作品に仕上がっていると思います。
長年のファンからすると異質すぎるダニエル007シリーズは微妙かもしれませんが、新しい時代の「007」を作っていかないと客は観てくれないと思います。
世界征服を企む敵が現れ、とんでもない兵器が使われるのを阻止する様式美。
毎回同じ展開では飽きてくるので新しい視点で「007」を描いた挑戦はとても良かったと思います。
シナリオの整合性なんてどうでもいい!
これまでの伝統を取り込みつつ、新しい価値観を見せるためにはどうすればいいのか?
その答えを出すダニエル007シリーズを振り返ってみるとシナリオとして納得できる形ではありませんでした。
『007 スペクター』で登場したブロフェルドは超大物の演出で盛り上げていましたが最終的には小物のような扱い。
本作でもサフィンが世界征服を企む理由がわかりにくかったり、スペクターの幹部があっさり壊滅したりと前作の強敵が小物に・・・。
シナリオは100点と言えるできではありませんが「007」はそれでいいです。
ボンドがかっこよく決めるポーズや、手汗握るカーチェイス、皮肉たっぷりのジョーク。
これがジェームズ・ボンドの「007」です!